測温用の NTC サーミスタ (Negitive Temperature Coefficiet thermistor) の特性は一般的に 25 °Cの時の抵抗値 R25 と いわゆる B 定数で表されることが多いのですが、B 定数による近似式では 25 °Cから離れるに従い誤差が増大します。 これを3係数の近似式にすることにより、抵抗値の中央値に対して全温度範囲で、例えば誤差 ±0.2 °C 以内に近似することができます。
市販の NTC サーミスタでは、近似式用のいわゆる B 定数が特性値としてデータシートに記載されています。
例えば、村田製作所の 1.0×0.5mm サイズの高精度 NTC サーミスタ NCP15XH103D03RC の カタログ値では次のようになっています。
(single B-constant)
B 定数1つだけによる近似では、その定数を決めた温度範囲以外では誤差が大きくなります。 また、誤差と温度範囲はトレードオフの関係になり、近似温度範囲を広くとると誤差は大きくなります (Fig.1 Reference 参照)。
B 定数だけを用いた指数関数近似では、非線形な NTC サーミスタの温度特性を使用温度範囲全域において精度よく近似することはできません。 しかしその誤差が3次関数的であることに着目して、 下に示される ピュイズー級数 (Puiseux series) 的な近似 (以降 Hosoda-3 と呼ぶ) の補正を行うことにより、 -40 〜 +125 °C といった広い温度範囲において誤差の少ない近似を行うことが出来ました。Fig.1 参照。
(Hosoda-3)
where,
3係数の近似式 a, b, c は、 指定した温度範囲における誤差の絶対値が各々の部品に中央値に対して最も少なくなるように コンピュータのプログラムを用いて求めています。 例えば先の NCP15XH103D03RC (Murata) に対しては、次の値を用いています:
この場合、-40 〜 +125 °C の全温度範囲において ± 0.044 °C 以内の近似誤差が得られています。
また、高温対応の 104NT-4-R025H42G (Semitec) に対しては、次の値を用いています:
この場合、-50 〜 +300 °C の全温度範囲において ± 0.068 ℃ 以内の近似誤差が得られています(Fig.2(b) 参照)。
3つの係数を用いたサーミスタの近似式は他にもあって、式(3) に示される Steinhart-Hart の近似式が知られています。
Hosoda-3 による近似では抵抗の近似値が定格温度で定格抵抗値に一致するようになっているため、 定格温度付近での誤差が少なくなっています。 また、温度範囲や素子により違いはあると思いますが、 サーミスタの使用温度範囲において最大誤差が小さくなるように係数を最適化した Steinhart-Hart の近似と 比較しても、全体的に誤差の少ない近似となっているようです。
上に述べた3係数による NTC サーミスタの近似式 Hosoda-3 を使うことで、 2010〜2025 年現在においてポピュラーな多くの NTC サーミスタにおいて、 その中央値に対して、例えば -40 〜 +150 °C の温度範囲で ± 0.05 ℃ 以内の近似誤差が得られました。
広温度範囲用のガラス封止サーミスタに於いても、例えば -50 〜 +300 °C の温度範囲で ± 0.07 ℃ 以内の近似誤差が得られました。
先に述べた高精度サーミスタにおいては、抵抗温度特性表からの表引きや補完によらず、 計算によって抵抗値から温度が全温度範囲で ± 0.044 °C 以内といった低い近似誤差で求めることができているため、 温度計測を伴う装置の高度化に貢献できることが期待されます。
For coefficients of other NTC thermistors,
Download ntc2tc.js — javascript source code
NTC サーミスタで温度を測るときに抵抗値を直接測らず、 基準電圧をサーミスタと固定抵抗で分圧して、その分圧比としてサーミスタの値を測る、 レシオ・メトリック動作で測ると基準電圧の絶対精度の影響を受けずに済みます。 このとき、固定抵抗にサーミスタの 25 °C での値と同じ抵抗値のものを使うと 25 ℃ を中心にした対数の有理近似となり、そこを中心に効果的にリニアライズされます。 NCP15XH103F の場合、フルスケールの 3/4 程に -25 〜 85 °C の計測値が収まることになります。 逆に考えるとサーミスタが断線や短絡した場合には異常として検知することが出来るとも言えます。
ntc2tc.js を更新