お家のステロイド

ドラッグストアで買えるものと皮膚科でよく処方されるもの

2026-01-22
Takayuki HOSODA

はじめに

本ページは、家庭で遭遇する機会の多い外用副腎皮質ステロイド剤について、 市販薬(OTC)から皮膚科で日常的に処方される薬剤までを俯瞰的に整理した技術ノートです。 化学・薬学・医学的素養を持つ読者を想定し、強度分類薬物設計(ante-drug)、 および併用成分の観点を意識して記述しています。

【免責事項】本ページの内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、 個別の医学的助言を構成するものではありません。
記載内容の利用によって生じたいかなる結果についても、責任を負うものではありません。

【注意】実際の使用にあたっては、必ず医師または薬剤師の指導のもと、用法・用量を遵守すること。
【禁忌】感染症(細菌・真菌・ウイルス)を主因とする病変には、原則として外用ステロイドを単剤で使用してはならない。

外用ステロイドの強度分類(日本)

区分 英語表記 代表的成分
最強Strongest クロベタゾールプロピオン酸エステル、 ジフロラゾン酢酸エステル
非常に強いVery Strong アムシノニド、 ジフルコルトロン吉草酸エステル、 ジフルプレドナート、 フルオシノニド、 ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、 ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、 モメタゾンフランカルボン酸エステル、 酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン
強いStrong デキサメタゾン吉草酸エステル、 デキサメタゾンプロピオン酸エステル、 デプロドンプロピオン酸エステル、 フルオシノロンアセトニド、 ベタメタゾン吉草酸エステル
中等度Medium アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、 グリメサゾン、 クロベタゾン酪酸エステル、 デキサメタゾン、 トリアムシノロンアセトニド、 ヒドロコルチゾン酪酸エステル、 プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
弱いWeak エキザルベ、 ヒドロコルチゾン、 プレドニゾロン

OTC(市販薬)に含まれる外用薬

アトピー性皮膚炎・蕁麻疹には リビメックス、虫刺されやかぶれには ムヒアルファ EX がお勧めです。
プレドニゾロン吉草酸エステルは アンテドラッグ (ante-drug) と呼ばれる 皮膚内で活性化し、全身移行性が低い 薬の一つです。

日本のドラッグストアで容易に購入できる外用薬(組成は 1g 中)
成分 分類 リビメックス リッチゾン 新エミリエント ムヒアルファS ムヒアルファEX
プレドニゾロン吉草酸エステル
Strong
副腎皮質ステロイド
アンテドラッグ
1.5mgN/AN/AN/A1.5mg
デキサメタゾン酢酸エステル
Strong
副腎皮質ステロイド N/AN/A25μg25μgN/A
コルチゾン酢酸エステル
Weak
副腎皮質ステロイド N/A3mgN/AN/AN/A
グリチルレチン酸
steroid-sparing
抗炎症補助成分 N/A5mg3mgN/AN/A
ジフェンヒドラミン塩酸塩 抗ヒスタミン薬(鎮痒寄り) N/AN/A10mg10mg10mg
マレイン酸クロルフェニラミン 抗ヒスタミン薬(H1 拮抗) N/A3mgN/AN/AN/A
クロタミトン 鎮痒薬 N/AN/A100mg50mg50mg
塩酸ジブカイン アミド型局所麻酔薬 N/A2mgN/AN/AN/A
イソプロピルメチルフェノール
殺菌剤(IPMP) N/A1mg1mg1mg1mg
トウキ軟エキス
抗炎症補助(生薬) N/AN/A36μg36μg36μg
アラントイン
組織修復成分 N/AN/A36μg36μg36μg

外用抗ヒスタミン剤は掻痒感の軽減を目的とするものであり、 炎症そのものを抑制する作用はステロイドとは異なります。

グリチルレチン酸は 11β-HSD 阻害を介して内因性コルチゾールの作用を増強し、 弱いながらも抗炎症効果を示します。
OTC 製剤ではステロイド量を抑えた設計において補助的に用いられることが多い。

家庭で使用される外用ステロイド製剤の例

皮膚科でよく処方される外用ステロイド

テラ・コートリル
酢酸ヒドロコルチゾン(1%)/Weak
深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、湿疹、皮膚炎群
メサデルム
デキサメタゾンプロピオン酸エステル(0.1%)/Medium
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、虫刺され、乾癬
リドメックス(後:スピラゾン)
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(0.3%)/Medium
アンテドラッグ
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、虫刺され、乾癬
ロコイド
ヒドロコルチゾン酪酸エステル/Medium
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、乾癬、掌蹠膿疱症
ベトネベート、リンデロンV(後:ベタメタゾン吉草酸エステル軟膏)
ベタメタゾン吉草酸エステル(0.12%)/Strong
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、虫刺され、乾癬
リンデロンVG
吉草酸ベタメタゾン(0.12%)/Strong
汎用性が高い代表的製剤
湿潤、びらん、結痂を伴うか、又は二次感染を併発している次の疾患:湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角皮症、脂漏性皮膚炎を含む)、乾癬、掌蹠膿疱症。
外傷・熱傷及び手術創等の二次感染。
抗菌剤配合:ゲンタマイシン硫酸塩 1 mg/g(力価)
フルコート、フルコートF
ルオシノロンアセトニド(0.025%)/Strong
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、虫刺され、乾癬、皮膚掻痒症、掌蹠膿疱症、薬疹・中毒疹。
深在性皮膚感染症、慢性膿皮症。
湿潤、びらん、結痂を伴うか、又は二次感染を併発している次の疾患:湿疹・皮膚炎群、乾癬、皮膚掻痒症、掌蹠膿疱症(抗菌剤配合剤)。
抗菌剤配合(フルコートF):フラジオマイシン硫酸塩 3.5 mg/g(力価)
マイザー(後:ジフルプレドナート)
ジフルプレドナート (0.05%)/Very Strong
アンテドラッグ
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、虫刺され、乾癬、掌蹠膿疱症、薬疹・中毒疹
フルメタ(後:エロコン)
モメタゾンフランカルボン酸エステル (0.1%)/Very Strong
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、虫刺され、乾癬、掌蹠膿疱症
デルモベート(後:グリジール)
クロベタゾールプロピオン酸エステル/Strongest
強力な抗炎症作用。外用だが長期大量使用で全身作用あり
湿疹、皮膚炎群、痒疹群、虫刺され、乾癬、掌蹠膿疱症
短期間・限局使用が原則

代謝されると失活あるいは活性が低下するよう設計された薬物を アンテドラッグ(ante-drug)といいます。
アンテドラッグとして設計された外用ステロイドは、高い局所抗炎症作用を維持しつつ全身移行性を低減することを目的としています。

デルモベートを始め、強い〜最強クラスの外用ステロイドでは、 大量・長期・ODT 使用により眼圧亢進を来すおそれがあり、 白内障緑内障が報告されています。
必ず医師の指導の下に使用すること。

抗菌剤配合外用ステロイドは、二次感染を伴う湿疹・皮膚炎に用いられますが、 安易な長期使用は 耐性菌選択 の観点から推奨されません。

口腔粘膜用ステロイド

アフタゾロン(後:デキサメタゾン)口腔用軟膏
デキサメタゾン 0.1%/Medium
舌炎の潰瘍・糜爛、難治性口内炎の潰瘍・糜爛
ケナログ(後:オルテクサー)口腔用軟膏
トリアムシノロンアセトニド 0.1%/Medium
舌炎の潰瘍・糜爛、難治性口内炎の潰瘍・糜爛、慢性剥離性歯肉炎
※先発医薬品のケナログ軟膏は、事業的理由により 2018 年に供給終了。

References

  1. 伊豆津宏二, 今井靖, 桑名正隆, 寺田智祐 (編), 今日の治療薬2026—解説と便覧, 南江堂, 2026