「瞬間接着剤って開封して使って、しばらくして次に使おうとすると固まっててダメになってることがあるよね?」
「PTFE パイプシールをぐいっと引っ張って被せてキャップをしておくと長期保管後でも普通に使えるよ!」
パイプシール用の PTFE(テフロン)テープは柔軟性と引張強さを持ち、自己融着性があるためノズルやキャップの隙間をしっかり封止できます。 -100℃〜260℃の耐寒・耐熱性に加え、ほとんどの化学薬品や溶剤、蒸気に侵されない耐薬品性も持っています。 さらに撥水性が高く、水蒸気透過性が低いため、特に瞬間接着剤のノズル部からの微量水分侵入を効果的に防ぐシール材として適しています。
使用手順
- ノズル部を良く拭いて接着剤等が残っていないのを確認し
- PTFE テープを延ばしながら密着させ
- 軽くテープを引っ張りながらキャップを閉めます
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私が試した中で適していたのは Nitto の PTFE 厚 0.1 mm NITOFLON PIPESEAL No.95 (JIS) です。
No.95 (JIS) は No.95S と違って引張強さが 7.0 MPa 以上の規定があり、伸びにくく千切れにくいです。
似て非なる安ものが沢山あるので要注意。手で簡単に千切れるようなのはお勧めしません。
シアノアクリレート系接着剤は空気中の微量水分によってアニオン重合を開始し硬化します。
僅かな水分も与えないためにはノズルの箇所で撥水性・非透湿性の PTFE テープで物理的にシールするのが有効です。
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開けてみると、ノズル部がしっかりシールされているのが分かります。
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スクリューロックタイプのもの(e.g. アロンアルファ タフパワー 等)の方がしっかりシールされるのでお勧めです。
吸湿することで硬化するシリコンシーラントや化学反応型弾性接着剤(e.g. セメダイン スーパーX 等)にも適用出来ます。
これらは水分と反応して縮合重合を起こし、シロキサン結合(-Si-O-Si-)の架橋構造を形成します。
スクリュー部の隙間を PTFE テープで埋めることで十分にシールできます。
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チューブの口とスクリュー部と合わせてダブルシールになっていたのが確認できます
水分との化学反応とは逆に、乾燥を防ぐ目的にももちろん使用できます。
分散媒の水分が蒸発して失われることで樹脂粒子が凝集・融合し、被膜を形成します。
スクリュー部の隙間を PTFE テープで埋めることで十分にシールできます。
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接着剤における水分の役割 型 水分の役割 代表例 特徴 水分イニシエート型 反応開始の引き金 シアノアクリレート
(瞬間接着剤)微量水分で急速硬化 吸湿化学反応型 化学反応物(縮合材)として消費 アクリル変性シリコーン樹脂
(弾性接着剤)表面から内部へ硬化、弾性を持つ架橋構造 乾燥凝集型 分散媒(蒸発して除去) 酢酸ビニル樹脂エマルジョン
(木工用速乾接着剤)水分蒸発で樹脂粒子が凝集・固化
Q: 瞬間接着剤の保管にシリカゲルのデシケータは有用か?
A: 部分的には有用ですが、決定的ではありません。
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シアノアクリレート系接着剤は空気中の微量水分によってアニオン重合を開始し硬化します。
必要な水分量は触媒量(極めて微量)であるため、デシケータで相対湿度を下げても硬化を本質的に防ぐことはできません。
シリカゲルはあくまで多孔質表面への物理吸着であり、容器全体の総水分量を低減する効果は限定的です。
大きなデシケータ内では、相対湿度が低くても絶対量としての水分が多く残り得るため、ノズル先端部からの浸入を防ぐ決め手にはなりません。
これに対し、ノズルやキャップ部を 撥水性・低透湿性の PTFE テープでシールする方法 は、水分の侵入経路そのものを遮断できるため、保存安定性を大幅に高めます。
したがって、瞬間接着剤の長期保管にはデシケータよりも物理的シーリングが有効と結論づけられます。