ある雨上がりの夏のキャンプの時のことだった。
料理用の水を近くの小川に汲みに行った。けれど雨上がりの小川は濁っていた。
「こんなこともあるかなーと思って持って来てるんだ♪ 」自慢そうにとりだしたのは、カリミョウバン。つけ物の色を良くしたりするのに使うやつ。
「へっへーっ♪OKじゃん♪ 」上澄みを汲んで戻り、飯ごうでご飯を炊いた。缶詰とかも開けて食べ始める。
「まずい!」なんか、キャンプにおける重要な楽しみが台無しになったような負け負けな気分になる。
「っていうか苦い! 」
「キャンプと言えばやっぱ、お約束のキャンプファイヤーでしょう! 」気をとり直して誰からともなく出たそんな意見に、 その辺で丸太の廃材と小枝と山程の枯葉を集めて来る。適当にやぐらを組んで火をつけた新聞紙でキャンプファイヤーに 点火しようと試みるけれども、しけった枯葉は燻るばかりで燃え上がらない。 燃え上がらないキャンプファイヤー同様に気分も燃え上がらないそんなとき、 傍らでこうこうと燃えているランタンの光が白々しかった。
「…そこにあるのは18リットルのガソリン…」この時、どこかで悪魔が囁いているような気がした。 消火用のバケツの水を、いわれのない憤りをぶつけるかのようにまき捨て バケツ一杯にガソリンを汲んだ。そして、くすぶっているキャンプファイヤーに ざばんと投げ入れた。ガソリンの流れの先端に火がつき炎が手元に向かって走る。 空中にあったガソリンが燻っている落葉にばさっと落ちた次の瞬間。
『どごぉぉぉぉん!』世の中には思い付いてもやってはいけない事があるんだと知った瞬間だった。
『パラパラパラ…』